倉下が高熱でぶっ倒れていたため今週のポッドキャスト配信はお休みです。
代わりにコラムを一つお送りします。
読書の目標の種類
新年ですから、読書についての目標・テーマ・抱負を考える機会もあるかもしれません。よくあるのが「今年は100冊読む」といった数値目標ですが、それ以外にもいくつかパターンがありえます。
たとえば「読む種類」についての目標です。「今年は科学の本をもっと読む」とか「今年はウィトゲンシュタインの本をもっと読む」という具合に、冊数ではなくジャンルや内容をターゲットにするタイプ。
あるいは「読み方」についての目標もありえます。「今年はもっとじっくり精読に取り組む」とか「並行読書にチャレンジする」といった感じ。拡張すれば、読書会に参加してみる、といったものもこのタイプになるでしょうか。
さらに統合的に「今年は制作に関する本をたくさん読み、その内容をまとめてレポートを書いて読書会のメンバーに読んでもらう」みたいな目標を立てることもできます。さすがにここまでいくと読書というか研究目標という感じがしてきますが、それでも立派な目標であることは間違いないでしょう。
まあ、ぶっちゃけどういう目標であっても構いませんし、目標なんてぜんぜんなくても構いません。不必要に自分を攻撃する材料にしてしまうくらいなら目標なんて無理して持つ必要は Nothing です。
でも何かしら「こういうことをしたい」という想いがあるならば、それを素直に書き留めておくのは悪くないと思います。手帳やノートなんかに(できれば1月のページあたりに)ぜひ書いてみてください。
(ちなみに倉下の今年の読書のテーマは「古き本を読む」です)
I軸の読書
そういえば、2013年に『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』という本を書いたのですが、そこで「自軸を作る読書術」なるものを提唱しました。
まず、T型人材という言葉があります。Tの縦棒を専門性に、横棒に広い知識に見立てて、二つの軸の知識を併せ持つ人間、というイメージです。
しかし、私はこの文字を見るたびに足下がふらふらして危なっかしいなと思っていました。そこで、下にも横棒を伸ばして、大文字の、しかもセリフ(serif)つきのIをイメージしたI型人材を考え出したのです。その際、下の棒は人間性を支える知識なわけですから、教養的な知識とひとまずは言えるでしょう。
下支えする教養的知識と長く伸びた専門的知識、そして幅広い分野についての(浅くて広い)知識。
この3軸を意識して読書をすると良いのではないか、というのが『ハイブリッド読書術』の提案で、大文字のIは、英語の「私」でもあるので、それにひっかけて「自軸」と名づけたわけです。
この考え方は、わりと今でも気に入っています。専門分野の深掘りはもちろん大切だけども、それだけだと「専門バカ」になってしまう。水平思考するためには他分野の知識が必要だし、どれだけ賢くても人間的に間違った判断を下すならそれは全体としては破綻してしまっている。なので総合的にバランスよく知識を得ていけたらいいね、という話はあまりにも当たり前すぎてキャッチーさがどこにもないわけですが(健康的な食事をしましょう、というのと同じ話です)、でも偏っているの人間存在である以上、たまに自分のバランスを確認してみるのは有用だと思います。
たぶんその確認は、読書の目標設定とも関わってくるでしょう。