今回は倉下が 『とっぱらう 自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」』を紹介しました。
コテコテの自己啓発感のあるタイトルですが、内容はもっとずっと身近で、役立つ考え方が提示されています。
書誌情報
タイトル&出版日
『とっぱらう――自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」』 2025/6/18
『時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』 2019/6/20
原題 「MAKE TIME How to focus on what matters every day」
著者
ジェイク・ナップ&ジョン・ゼラツキー
翻訳
櫻井祐子
出版社
ダイヤモンド社
目次
■INTRODOCTION――これが「時間オタク」の全技術だ
■Highlight/ハイライト
■Laser/レーザー
■Charge/チャージ
■Tuning/チューニング
■「いつか」を今日にする
概要
本書は大きく二つの層で話が展開されます。
一つは、「自分にとって大事なことをする時間をもっとつくる」ためのシステムの解説。もう一つは、それぞれの文脈で展開される個々のテクニック。後者はいわゆる「ライフハック本」の内容と重なるものが多いですし、既知のものもたくさんあるかもしれません。
というわけで、今回は前者の「システム」に注目しました。もう少し言えば、そのようなシステムをいかに構築するのかというアプローチです。
ライフハックを料理のレシピだと考えれば、レシピ本を買ってきてそこにあるレシピを一気に習得しようとする人はいないでしょう。何か気になるレシピを一つ選び、実際につくってみる。その結果を確かめて、次回つくるときにちょっと変えてみる。そういう繰り返しで、少しずつレシピのバリエーションを増やしていくと思います。
本書で提示されるたくさんの戦術も同様だと著者らは述べます。何か一つを選び、実際に試してみて、その結果を踏まえて、また試す。それを繰り返すことで、少しずつ自分が使える戦術のレパートリーを増やすのがよいのだと提示されます。
私もまったく同意見です。そのテーマで自分でも一冊本を書きたいくらいです(『ロギング仕事術』はそういう側面を少し持っています)。
そう考えると、著者らは面白い仕事をしたことになります。
一方では、バラバラに散らばっているライフハック的なテクニックを、「自分にとって大事なことをする時間をもっとつくる」という大きなシステムの下位要素に位置づけました。雑多なテクニックが乱雑に並んでいるのではなく、大きな文脈のもとで統制した形です。
もう一方では、そうした個々の戦術を体系立ててまとめることまではしませんでした。提示したのは、大きな枠組みがどうあるのか、という点だけであって、具体的な戦術レベルまでの規定はせず、著者らが言うように「何かを選んで、試す」というアプローチが採用できるようになったのです。
この点は、たとえばGTDというメソッドが、下位要素のどれか一つだけを選んで試してみたらいい、という促し方をされない点と対比的に感じられます。
別の言い方をすれば、「メイクタイム」システムの発想は、細部まで体系だった構造を作ったというよりは、大きな枠組みだけを提供する「ライフハックのプラットフォーム」づくりだったと言えるかもしれません。
実に面白い仕事ですね。













