今回は二冊セットシリーズの第四回として、『懐疑論』『科学否定論はなぜ人をひきつけるのか』の二冊を取り上げました。
哲学方向と科学方向と若干の違いはあれど、重要な部分は共通していると思います。
収録に使ったメモは以下からご覧いただけますので、書誌情報もそちらを参照ください。
真実をめぐる冒険
インターネット以降、専門家の権威が崩れてしまい、またフェイクニュースや詐欺的な活動の勃興も相まって、何かを素朴に信じることができなくなりました。
陰謀論や科学否定論にはまっている人を「信じやすい性質」だと理解することが多いかと思いますが、よくよく考えれば、私たちは科学的な通説を当たり前のように信じているわけです。それに対して疑義を持っているのがそうした人たちで、むしろ「疑いやすい性質」を持っていると理解したほうが良いでしょう。
でもって、専門家の権威が崩れたということは、「専門家に任せておけば安心」という信頼の構造が崩れていることを意味しています。そうなると不安が生じ、「正しいこと/真実」がよりいっそう強く求められることになる。
そのときに、その不安を解消してくれる人が現れたら、私たち人間はそこに引き寄せられるでしょう。「あいつらは現実のことをぜんぜんわかっていない」と強い声で批判し、「正しいことはこれだ」と断言してくれる声は、不安でいっぱいな心を愛撫してくれるはずです。不信感を共有するコミュニティの出来上がりです。
ようは、私たちが今置かれている情報環境と人間の心理をまったく無視して「正しい証拠を提示すれば問題は解決する」というアプローチでは問題は解決しないばかりか、まさにそうしたアプローチが不信感・不安感を増長させていることに目を向ける必要があります。
「正常・異常」のような規範性を持ち出さなくても、懐疑や科学否定論にはまることによって生きづらさを抱えている人がいたら、その人をケアするという姿勢を持つことはできるはずです。そのためには、人の話を聞き、こちらの話も聞いてもらうというコミュニケーションの基本がとても大切になってくると思います。
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