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BC022『英語の読み方』『英語の思考法』『伝わる英語表現法』
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BC022『英語の読み方』『英語の思考法』『伝わる英語表現法』

英語学習の新書三冊セット

今回は、近年発売された英語学習に関する新書を三冊セットでご紹介します。

『英語の読み方-ニュース、SNSから小説まで (中公新書 2637)』

発売は2021年3月25日。

著者は北村一真(きらむらかずま)さん。大学受験塾講師をやっておられて、現在は杏林大学外国語学の準教授とのこと。

目次は以下。

  • 第1章 英文を読む前に―日本人に適した英語の学び方

  • 第2章 英文に慣れる―インターネットを活用したリーディング

  • 第3章 時事英文を読む―新聞、ニュースに挑戦

  • 第4章 論理的文章を読み解く―スピーチ、インタビュー記事から論文まで

  • 第5章 普段使いの英文解釈―SNS、コミック、小説を読みこなす

  • 巻末付録 「一歩上」に進むための厳選例文60

タイトルの通り「英語の読み方」を提示した一冊で、英語をどう読解していくのかが実況中継的に語られている。文法の解説というよりは、文読解の理路とその手がかりが提示されていて、「そうそう、まさにこういうのが知りたかったんだよ」と膝を打った。

基礎的な文法などを理解しているのが前提の本だが、そこからの次の一歩にちょうどよい一冊。

『英語の思考法 ――話すための文法・文化レッスン (ちくま新書)』

発売は2021年7月8日。

著者は井上逸兵(いのうえいっぺい)さん。慶応大学文学部教授で社会言語学や英語学が専門とのこと。NHKのEテレ「おもてなしの基礎英語」という番組を担当されていた(倉下は未視聴)。

目次は以下。

  • 序章 英語の核心

  • 第1章 英語は「独立」志向である

  • 第2章 英語は「つながり」を好む

  • 第3章 英語にも「タテマエ」はある

  • 第4章 英語の世界は奥深い“応用編”

  • 第5章 英語を使ってみる“実践編”

英語の核を「独立」「つながり」「対等」の三つに据えて、英語話者のマインド(価値観)を紹介していく。Excuse me/usの使い分けの例示が非常にビビッドで、以下に英語が「個」を大切にしているのかが伝わってくる。

『伝わる英語表現法 (岩波新書)』

発売は2001年12月20日なのだが最近復刊されてネットで大人気になっている本(今はかなり入手しやすい状況)。

著者は長部三郎(オサベサブロウ)さん。アメリカ国務省言語部勤務で日本語通訳担当という経歴をお持ちの方。文法を解剖して、正確に意味を移していく、という「訳す」姿勢ではなく、話者の言いたいことを、適切に聴衆に伝えるという本書を貫く姿勢は、その業務で育まれたのではないかと推測。

目次は以下。

  • 第1章 英語と日本語の違い

  • 第2章 日本語は名詞、英語は動詞―日本語の名詞から英語を考える

  • 第3章 日本語は抽象的、英語は具体的―日本語の文(センテンス)から英語を考える

  • 第4章 「一事一文」の原則―日本語の文章から英語を考える

  • 第5章 英語の構造と日本語

  • 終章 体験的英語教育―私の提言

とにもかくにも「英語と日本語は、まったく異なる言語である」というひとつの大きなメッセージが貫かれている。その異なる言語の移動において、いかに「言いたいこと」を「伝える」のかの方法が解説されている。

倉下メモ

この三冊は、 倉下の「英語観」を刷新してくれました。言い換えれば、「英語的感覚」というものがどういったもので、それが日本語といかに異なっているのかがじんわりと感じさせてくれた三冊です。

本書らのおかげで、英語を読むときにまず単語/品詞ごとに注目して意味を「分解」していくのではなく、まず文全体を捉えるように意識が切り替わりました。

また、たとえば自分の原稿について考えているときに「 1章、2章の見通しが立った」という「思い」があるときに、それを英語で言おうとするときに「見通し」という言葉を辞書で引くのではなく、「この見通しってどういうことだろう?」と考え、たとえば「I got a way I would go.」などと言えば私の伝えようとしていることが伝わりそうだな、などと考えるようにもなりました。

この表現が文法的・単語的にどれだけ適切なのかはわかりませんが、それでも「言わんとすること」を伝えられる文にはなっていると想像します。

そういうマインドセットの切り替えを後押ししてくれた本たちでした。

その後買った英語学習本

ついでに新しく買い足した本もご紹介。

『シンプルな英語』

『英文解釈のテオリア~英文法で迫る英文読解入門』

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面白かった本について語るポッドキャスト&ニュースレターです。1冊の本が触媒となって、そこからどんどん「面白い本」が増えていく。そんな本の楽しみ方を考えていきます。