今回はデイモン・セントラの『CHANGE 変化を起こす7つの戦略: 新しいアイデアやイノベーションはこうして広まる』を取り上げました。
書誌情報
原題
『CHANGE:How to Make Big Things Happen』
出版日
2024/1/25 (原著:2021)
出版社:
インターシフト
著
デイモン・セントラ
ペンシルヴェニア大学のコミュニケーション学、社会学、工学の教授。
翻訳
加藤万里子
『アナログの逆襲』など
目次や今回の内容に関係する倉下の読書メモは以下のページにまとめてあります。
「弱い絆」を再考する
昨今のビジネス書などでは、「弱い絆」が重要だとよく言われます。
弱い絆とは、日常の人間関係よりも少し「薄い」関係性のことで、そうした人たちは自分の日常と異なった環境で生活しており、異なる情報を持っていることが多いので、そこにアクセスしましょう、というわけです。
また、そうした弱い絆で人々がつながるSNSは、情報の拡散に貢献することはよく知られています。プロモーションなどで「発信力」のある人に仕事が集まるのは、そうした人たちならばより効果的に情報を拡散してくれるだろうと期待してのことでしょう。
そのような情報の拡散モデルは、「情報はウイルスのように広まる」という観念が前提にあるわけですが、本書はそこに異議を唱えます。たしかにそうした伝播の仕方もあるが、そればかりではないだろう。単に情報を広めるだけでなく、行動や信念を変えるような変化が広がっていくのは、「ウイルス」のようなモデルとはまったく違っているんだ、という議論が実例を通しながら検討されていきます。
本書において学べることはたくさんあるわけですが、「弱い絆」至上主義を再検討してみることはその中でももっとも重要なことかもしれません。
たしかに強い絆しかない状態よりは、弱い絆があった方がいい。しかしそれは、弱い絆が強い絆を代替してくれることを意味しない。むしろ、土台として強い絆があるからこそ、弱い絆の力が活かせるのではないか。そんな風に考えることができるでしょう。
その他、表面的なプロモーションではなく、より深くコミットした新しい動き(運動)を起こしてみたい人には有用な知見が多く見つけられると思います。
Share this post