今回はチャールズ・デュヒッグの『生産性が高い人の8つの原則 (ハヤカワ文庫NF)』を取り上げました。
いわゆる「ライフハック」な考え方がたっぷりな一冊です。
書誌情報
原題
SMARTER FASTER BETTER: the secrets of being productive in Life and Business(2016/3/8)
単行本版
あなたの生産性を上げる8つのアイディア 単行本 – 2017/8/30
著者
チャールズ・デュヒッグ
ジャーナリスト。イェール大学卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA取得。「ロサンゼルス・タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」のライターを務め、現在は「ニューヨーカー・マガジン」その他に寄稿。2013年には「ニューヨーク・タイムズ」のリポーターのチーム・リーダーとして、ピュリッツァー賞(解説報道部門)を受賞。最初の著書『習慣の力〔新版〕』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)は「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラー・リストに3年間も留まった。第2作である本書も2016年、同リストにランクインした。
翻訳
鈴木晶
『愛するということ』、『猫に学ぶ――いかに良く生きるか』、『ラカンはこう読め! 』など多数。
出版社
早川書房
出版日
2024/3/13
目次
第1章 やる気を引き出す―ブートキャンプ改革、老人ホームの反乱と指令中枢
第2章 チームワークを築く―グーグル社の心理的安全と「サタデー・ナイト・ライブ」
第3章 集中力を上げる―認知のトンネル化、墜落したエールフランス機とメンタルモデルの力
第4章 目標を設定する―スマートゴール、ストレッチゴールと第四次中東戦争
第5章 人を動かす―リーン・アジャイル思考が解決した誘拐事件と信頼の文化
第6章 決断力を磨く―ベイズの定理で未来を予測(して、ポーカーに勝つ方法)
第7章 イノベーションを加速させる―アイディア・ブローカーと『アナと雪の女王』を救った創造的自暴自棄
第8章 データを使えるようにする―情報を知識に変える、市立学校の挑戦
付録―本書で述べたアイディアを実践するためのガイド
「生産性を高める」とは
インターネットの仕事術系情報では「生産性向上」や「productivity」といった言葉をよく見かけるわけですが、そのたびに私は「むむっ」と警戒フィルターを発動させます。
というのも、単にそれが「タスクをたくさんこなすこと」を意味しているのではないか、あるいは生産性向上のためのツールを使うことそのものが目的になっていないか、という懸念があるからです。
実際、一時間のうちに実行できるタスクが10から20に増えたとしても、そのタスクが効果を上げていないことは十分ありえるでしょうし、タスク以外の目を向けるべきものから目を逸らしてしまっていることもあるでしょう。はたしてそれは望ましい「改善」と言えるのでしょうか。
一方で、たしかに効果的(エフェクティブ)な状態というのはあって、メールを書こうとして、なかなか取り掛かれずに、インターネットを彷徨っている間に、新しいツールの情報を見かけて喜び勇んでダウンロードしてしまっている、という状態はあまり効果的な時間の使い方ではないとは言えるので、何一つ改善を試みようとしないというのも、それはそれで違う気がします。
本書では、「生産性を高めるのに必要なのは、今よりももっと働き、もっと汗を流すことではない」という明瞭な指針が掲げられていて、「まさにその通り」と強く感じられます。
以下のような定義も登場しますが、
最少の努力で、最大の報いが得られる方法を見つけること
体力と知力と時間をもっと効率よく用いる方法を発見すること
ストレスと葛藤を最小限にして成功するための方法を学習すること
大事な他のことをすべて犠牲にすることなく、何かを達成すること
これに納得できる人もいれば、そうでない人もいるでしょう。
それでも「生産性とは、いくつかの方法を用いて正しい選択をすることである」という根本的な方向性については同意できるのではないでしょうか。
さらに言えば──本編でも語っている通り──、「正しい選択をするために、自分は有効な方法を使っている」という感覚を持つことが、人生全般にわたる「やる気」の高め方なのかもしれません。This is Lifehacks.
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