「功利主義」を学んで、哲学・倫理繋がりで「過去に挫折した本を読もう」って感じで読み始めたんですが、読み返してみて改めて長くて難しい本だと感じました。(当時挫折したのが頷ける)
章単位で見るとすごく面白いくてわかりやすい。ただ、1個1個のエピソードはすごく面白いけど、著者の主張をちゃんと理解しようと思うと難しい。(難しかった)
全体をしっかりと理解していないと著者の主張の論拠がはっきりとは見えてこない。そして、全体を理解しようとすると本のボリュームが多いので、理解しておきたい項目も多くて大変、という感じでした。
全ての内容が血肉になるまで理解できていないから、全部の話をうまく繋げることができない、みたいなイメージというのかな。
とはいえ、ある程度理解ができると、著者の構成のうまさに感服します。
この本は哲学全体の歴史を大きくなぞりながら、それぞれの考え方の弱点、批判点を挙げていき、最後最後に著者の主張を登場させて「ほら、こうすると全部納得できるでしょ」という話につなげます。
この流れを構成する際に、著者は「哲学の歴史・時間の流れ」を完全に無視して話を展開。(古代ギリシアのアリストテレスが登場するのは最終盤)
これが、実に見事。
著者の意見に賛同するかは置いといて、この構成で生で話をされたら仲間になっちゃうわ、という「プレゼン力」の点でもすごく参考になる本でした。
予備知識
10年前の自分は、以下のような予備知識なしで読んだため「よくわからなかった」という感想を持ちました。
同じような経験をしないためにも、私が「読む前に知っておいたらより楽しめたと思う」内容を簡単にまとめます。(全体をざっくり把握しておくとわかりやすさがかなり違う)
哲学の大きな時系列での流れ(この本で触れられている範囲)
古代ギリシア(B.C.400–300頃)にいた偉人。ソクラテス、プラトン、アリストテレス。(こういう人がいた、くらいがわかればいい)
19世紀イギリスの「功利主義」
「最大多数の最大幸福」というのが「道徳的に正しい」という考え方が生まれる。
同時期のドイツに「カント」という哲学者も現れる。
「本当の意味での自由とはなんなのか」ということを考えたり、ある行動が道徳的かどうかはその行動がもたらす結果ではなく、その行動を起こす意図で決まる、という主張などを行う。
1970年代の「ジョン・ロールズ」
正義とは何か。公正とはどういうことか、ということを「原初状態」という状態をもとにして考えるべきだ、という話をして「リベラリズム」が再び見直される。
著者はジョン・ロールズが言う「正義」というものが「これまでの正義」だと考えていて『これからの「正義」の話をしよう』と言っている。
「正義」と「善」と「道徳」
もう一つ日本語で難しいのが「正義」と「善」と「道徳」と言う言葉。
「正義」は「Justice」の訳で、日本語でいう「法律的に正しい、公平」というような意味。
「善」と「道徳」と言う言葉は、ある意味「それがなんなのか」を考える行為こそが哲学で、哲学者によって「善とはなにか」は意見が分かれる。
(そしてここ最近の哲学界全体の流れとして、「善」と対する答えを出すのは難しいから、まずは「正義」について考えようとなっている印象)
と、こんな感じで捉えておくと考えやすいです。
あとがき
色々と学んで理解できたことをまとめていますが、まだまだ理解できていない部分はたくさんあります。
最近はこういった分野のことも少しずつ「Anki」を使って整理しており、時間が経ってからもう一度読んでみたら見え方が変わってきそうで、それもまた楽しみです。