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BC005 アフタートーク&倉下メモ
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ブックカタリスト第五回の倉下メモ

『これからの「正義」の話をしよう』

マイケル・サンデル

アメリカの政治哲学者。コミュニタリアニズム(共同体主義)の代表的論者。名前が似ているが、コミュニズム(共産主義)とは異なるので注意が必要。

その他の著作に以下がある。

また、本書のヒットにってさまざまな「教室もの」の書籍が多数出版された。出版業界では、ときどきこうしたブームの火付け役となる本が生まれる(最近の大全ブームなどが記憶に新しい)。

共同体主義

共同体主義は、自由主義(リベラリズム)に対抗する思想だが、しかし共産主義のようにコミュニティーを最上価値として個人の自由を認めないような形はとらず、むしろ根本的には個人の尊厳を重視する。ただ、それが際限なきレベルまで拡大されることを認めない。

対比させると、以下。

「ジェファソニズム=共同体的自己決定主義=共同体主義」

「ハミルトニズム=自己決定主義=自由主義」

私たちが共同体の一部である(あるいは共同体があってこそ個人が生活し、成果を出せる)と認識した上で、自己決定を行うこと。であれば、共同体を滅亡に追いやるような個人の自由は制限されることになる。その制限が必要なのか、それともそれは行きすぎた制約(パターナリズム)なのかで、この二つの思想が分かれる。

この対比は実際的にも重要で、人間は置かれた文脈によって選択を変えてしまうのだから、自分を自由な個人として見るか、それとも共同体の上に存在するものとして見るかによって、「自由な選択」もまた変わってしまうだろう。

トロッコ問題

本書で有名になった問題。トロリー問題とも呼ぶ。5人がトロッコにひき殺されそうになっているとき、一人の命を犠牲にすればその5人が助かるとき、倫理的に「正しい」判断はどのようなものか、というもの。

この「正しさ」は、個人がその選択に納得できるかという側面と、その行為を法律がどのように捌くのかという二つの側面があり、前者が倫理・道徳方面と、後者が政治哲学と関わっている。

このトロッコ問題はさまざまなバリエーションがあり、それだけで本が書かれている。

倉下が考えるに、たとえ結果的に法律が罰さなくても、目の前の人間を突き落とすことに人の心は耐えられないだろう。一方で、遠隔操作でボタンを押すならばそれよりも軽度の影響で済むと想像する。

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