倉下メモ
本書の妄想とは何か。たとえば、「被害妄想」のようなネガティブなものではない。今この社会には存在していないものであり、それを他者に語ると「はあ?」とあきれられるくらいに今の価値観から乖離してしまっているもの、というくらいのニュアンス。
他人に語ったときに、「ああ、それって便利だよね」と共感されるならば、既存のものの改良でしかなく(それはそれですごいわけだが)、イノベーションには至れない。言い換えれば、そのときの価値観を書き換えてしまうようなプロダクトこそがイノベーションと言える。
私たちは自分が持つ価値観=世界観=パラダイムをフレームにして物事を考え判断するので、それが世間様と完璧に合致するならば、新しいものは何も生まれてこない。逆に世間様と完全に違っているなら話が通じない。だからこそ少しだけ「ズレ」ているものを思いつく価値観は貴重である。「はあ?」とあきれられる妄想を抱けるのは一つの希有な力なのだ。
日本の画一的な教育と、単一指標による評価は、そうした希有な力の持ち主を貶め、規格化しようとする点でイノベーティブな芽を刈り取っているのではないか、とまでは本の中で直接書かれていないが、そういうニュアンスは受け取れる。
すごく良かった箇所の引用
同じようなアイデアは、自分以外にも思いつくことができる。でもその妄想を阻む壁を乗り越えられるのは自分しかいないかもしれないし、乗り越え方に自分らしさが出せるかもしれない。そう思うと、一回やってみて失敗するぐらいのほうが、やり甲斐のある面白いアイデアのように思えるのだ。
失敗が重要なのは、それが「自分が取り組んでいる課題の構造を明らかにするプロセス」だからだ。
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