(音声ファイル抜きで配信してしまいましたので、再配信です)
今回は『闇の自己啓発』について。
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以下倉下のメモ
闇の自己啓発会とは
以下の四人による読書会。
江永泉(えながいずみ)
木澤佐登志(きざわさとし)
ひでシス
役所暁(やくしょあかつき)
本書はその読書会(闇の自己啓発会)の内容を書籍化したもの。
「闇の自己啓発会」はのれん分けを行っており、自分で立ち上げることも可能。以下の記事を参照のこと。
読書会【闇の自己啓発会】〈のれん分け〉キャンペーン|江永泉|note
共著者の一人、木澤佐登志は以下の本の執筆および序文の寄稿を行っている。
『ダークウェブ・アンダーグラウンド』は、本書の第1部でも取り上げられており、また「暗黒」/「闇」という部分でも本書に響き合う一冊。
目次
本書の目次とは、すなわち本書が取り上げる本のリストでもある。
第1部 闇の社会
ダークウェブ―課題図書
木澤佐登志『ダークウェブ・アンダーグラウンド―社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』
中国―課題図書 梶谷懐/高口康太『幸福な監視国家・中国』
雑談1 『天気の子』と神新世
第2部 闇の科学
AI・VR―課題図書 海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる―ルポ最新科学』
宇宙開発―課題図書 稲葉振一郎『銀河帝国は必要か?―ロボットと人類の未来』
雑談2 『ジョーカー』のダンス
第3部 闇の思想
反出生主義―課題図書 『現代思想』2019月11月号 特集「反出生主義を考える」
アンチソーシャル―課題図書 レオ・ベルサーニ/アダム・フィリップス『親密性』
雑談3 ゼロ年代から加速して―加速主義、百合、シンギュラリティ
補論 闇の自己啓発のために
どれも現在・現代の「当たり前」の感覚から遠く離れた地点から発せられ、ぐおんぐおんとそれを揺さぶるような内容の本である。
暗黒啓蒙(The Dark Enlightenment)と闇の自己啓発
近代の歩みとしての啓蒙主義に疑問を投げかけ、いっそそれを破壊しかねないベクトルを持つ思想。その思想の流れは、木澤佐登志の『ニック・ランドと新反動主義』が面白く読める。
近代〜現代がイノセントに前提にし、また称揚してきた考え方を揺さぶるという点では非常に力のある思想ではあるが、しかし、それが結局のところ「啓蒙」の形でしか足られないことに構造的限界を感じる。
一方「闇の自己啓発」は、暗黒啓蒙と同じ疑問を持つが、しかしその歩み方が違う。彼らは本を読み、それについて各々が語り合う。その人自身の形で。それがつまり、Dark Self-Enlightenmentである。
そんなビッグブラザーの支配する中で、自己を奪われないためには何をすればよいのか。私は読書会こそがその答えであると思う。ひとりで思考し、学び続けることが難しくても、ともに語り、学び、思考する共犯者がいることで、自己を失わずに、思考することが続けやすくなる。
その語り合いの中では、差し出される光=闇に自己を融和させる必要がない。むしろ語り合いの中でこそ、いっそお互いの輪郭線がはっきりし、また溶け合うというアンビバレントな状況が起こり得る。大衆になり切れず、かといって孤独に生きていくほどのタフさを持たない人間にとって、それこそが救いなのではないか。そんな風に倉下は感じた。
読書会の本
同じく読書会(的な)本として『人文的、あまりに人文的』がある。
こちらはもっと人文寄りのセレクトで、小気味よくたくさんの本を紹介してくれている。
人がいて、その人が本について語る。連鎖的・連想的にその他たくさんの本やコンテンツに言及する。特定の分野を読み深めるのではなく、いろいろな本の発見現場としては、そのような語られ方が一番楽しいと感じる。誤配がそこら中で起きるから。
その他言及した本
小説とアニメ映画がある。アニメ映画は沢城みゆきさんがとても良いが、それはそれとしてこの作品を生(き)で味わうなら小説の方が良いだろう。タグ付けされた小説は、それ自体にメッセージを有しているから。