ブックカタリスト
ブックカタリスト
BC016 アフタートーク&倉下メモ
0:00
-31:45

BC016 アフタートーク&倉下メモ

関係性で覚えていく大切さ

『英語独習法』

倉下メモ

倉下も読んでいた本ですが、ほとんどすっかり内容を忘れておりました。今回はいい感じで復習できたと思います。

  1. 言語を使うことにおいては「スキーマ」がメチャ重要

  2. 言葉(知識)は関係性を持っている(共起・似た言葉)

  3. ともかく語彙を増やそう

  4. 勉強は目的とコストを考えて

たとえば、「Zettelkasten」という言葉があるのですが、いまだに倉下はこの言葉が覚えられません。なぜかというと発音できないからなんですね。これはドイツ語に限らず、読みづらい英単語とか漢字とかでも起きます。逆に言うと、読めるものは思い出しやすい。つまり、文字・意味・音という三つの記憶が結びついていると覚えやすい(あるいは思い出しやすい)のです。一つの単語レベルでも、複数の情報が組み合わさっています。

また、共起語のように、ある言葉とよく一緒に使われる言葉というのもあって、ズボンは履くで、服は着るというのは本編でも出てきましたが、他にもそのニュアンスならこの言い方といったチョイスもすべてこの共起関係にあると言えます。イディオムなんかは固定化された共起性とも言えるでしょう。

文の構成レベルでも似たようなことはあって、「Aは少々高い。しかし、」という文があったら、読み手は必然的に「性能も高いのでそれでも満足できる」とか「Bはもっと高いので比較的お得である」のような文が来るだろうと(無意識に)予想します。この無意識の予想がスキーマなわけですが、それは「Aは少々高い。しかし、明日の天気は晴れだ」という文章があまりにも不自然に感じられることからもわかるでしょう。文法的に何一つ誤りがなくても、文章としてはヘンだと感じる何かがあるわけです。この例はかなり極端ですが、そういう「ヘンな感じ」を避けようと思ったら、逆に「どういう文ならヘンとは感じられないのか」を体感するしかありません。知識としてではなく、実感としてそれがわかるようになる必要がある、ということです。

この辺の話は、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」の話にも通じているでしょう。

でもって、類似の単語レベルでも関係性があります。「歩く」と「ふらふら歩く」と「ちょこまかと歩く」という言葉の(あるいはそのニュアンスの)違いが知覚できるのは、そうした類似の言葉があるからです。「赤」という色が認識できるのは、赤い以外の色を知っているから、というのに近しいでしょう。類似する言葉との差異の中で、その言葉の意味が際立つ。そんな風に言えるかもしれません。

だからまあ、語彙を増やすのは、特にネットワークとして語彙を増やすのは大切なのだと思います。それは何も類義語を覚えよというだけの話ではなく、一つの文(あるいは文章)もまた言葉のネットワークを形成していると考えれば、文(文章)に触れることも大切なのだ、という話に接続します。

ちなみに、中公新書の『英語の読み方 ニュース、SNSから小説まで』(北村一真)では、英文の「こういう文の構造がきたら、次はこう来るよね、ほらやっぱり」という本来言語化されていないスキーマ的予想が、非常にわかりやすく言語化されているので、まさに「英語の読み方」の参考書として有用です。

あと、ちくま新書の『英語の思考法 ――話すための文法・文化レッスン』は最近買って、これから読むところです。この三つを、英語学習新書御三家と呼ぶ……かどうかは、読み終えてから判断するとします。

次の本の候補

『理不尽な進化』がすごく面白かったのでぜひ取り上げようとも思いましたが、倉下は著作業を営んでおり、ちょうど新刊が発売されるので、その本を著者自らが紹介する、という試みをやってみようと思います。

『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』

0 Comments
ブックカタリスト
ブックカタリスト
面白かった本について語るポッドキャスト&ニュースレターです。1冊の本が触媒となって、そこからどんどん「面白い本」が増えていく。そんな本の楽しみ方を考えていきます。