Jul 19, 2022 • 1HR 6M

BC042『超没入 メールやチャットに邪魔されない、働き方の正解』

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面白かった本について語るポッドキャスト&ニュースレターです。1冊の本が触媒となって、そこからどんどん「面白い本」が増えていく。そんな本の楽しみ方を考えていきます。
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今回取り上げたのは、『超没入 メールやチャットに邪魔されない、働き方の正解』

[カル ニューポート, 池田 真紀子]の超没入 メールやチャットに邪魔されない、働き方の正解

タイトルはノウハウ書っぽい響きですが、実際は「デジタル時代のナレッジワークに必要なこと」を提言する一冊です。

書誌情報

  • 著者:カル・ニューポート

  • 翻訳:池田真紀子

  • 原題:『A World Without Email: Reimagining Work in an Age of Communication Overload』

  • 出版社:早川書房

  • 出版日:2022/5/24

概要

大きく二つの部で構成されている。

第一部は「メールが持つ問題」が指摘されるが、別段電子メールを使わないようにしようと著者は主張したいわけではない。そうではなく、メールによる常時接続性、不要なタスクの発生、返信しなければならないという心理的圧力が、働き手のポテンシャルを抑えてしまう点を問題視している。

電子メールはあっという間に、私たちの「仕事」に入り込んだが、電子メールがどのような機能を持ち、私たちのワークフローにどのような影響を与えるのかがそれぞれの職場で検討された後はあまりうかがえない。むしろちょっとした会話はおしゃべりの代替として「するっと」入り込んできた、というのが実態に近いだろう。そんな運用では、いずれ破綻するのは目に見えているし、運用を変えないままにツールを替えたとしても状況は変わらず、むしろ悪化することも懸念される。

電子メールを起点とした、「注意散漫な集合精神」はナレッジワーカーにとって百害あって一利くらいしかない(メールはなにしろ手軽なのだ)。その百害を理解した上で、変化を呼び込んでいかなければならない。

そこで第二部では、どのようなワークフローを構築していけばいいのかについての原則が四つ示される。

注意資本の原則

知識産業の生産性は、人間の頭脳が持つ、情報に継続して価値を付け加える能力をこれまで以上に最適に活用できるようなワークフローを確立することにより、大幅な向上を望める。

工程(プロセス)の原則

洗練された生産工程のナレッジワークへの導入は、業績を大幅に向上させるとともに、ストレスを軽減する。

プロトコルの原則

職場で業務の調整をいつどのように行うかを最適化するルールの設計は、短期的には労力をようするが、長期的にははるかに生産的な行身という成果を生む。

専門家の原則

  • ナレッジワークでは、取り組む仕事の数を減らし、一つひとつの仕事の質を上げて結果に責任を負うことが、生産性を大幅に向上させるための土台になりうる。

また、「効果的な生産工程に共通する特徴」として以下の三点を挙げる。

  • 作業ごとの担当者と進捗を容易に確認できる。

  • 散発的なコミニケーションが最小限でも作業が進む。

  • 工程の進行に合わせて担当者を更新する際の手続きがあらかじめ決められている。

さて、皆さんの職場(あるいは自分の働き方)において、これらの原則や特徴はどの程度備わっているだろうか。もし備わっていないとしたら、何をどう買えれば、働き手が自らの注意を活用できるようになるだろうか。などと、考えるフックがたくさん含まれている本である。

シン・ドラッカー

私はドラッカーが大好きなので、著者が本書内でドラッカーをやや批判的に取り上げようとしているのを感じて、「ほほぅ、お手並み拝見」と挑発的な感じで読み進めていたが、著者の指摘は至極もとっともなものであった。

ようは、知識労働者の「仕事の仕方」は管理者がコントロールすることはできないが、しかしすべての裁量を与えなければいけない、というわけではなく、むしろそうすると全体の生産性が下がってしまうことが十分に起こりえる、という点だ。「業務の遂行とワークフローを区別する」と著者は述べる。

この場合の「業務の遂行」が、いわゆる知識労働者の領分であり、マネージャーが口出しすべきないものだ。アイデアを考えるのに、紙を使ってもいいし、散歩してもいいし、雑談してもいいし、本を読んでもいい。そんなことをいちいち管理するのは筋が悪い。

一方で、組織の中で仕事がどう流れていくのかについては、マネージャーが全体的な視点で統括した方がいい。むしろそれがマネージャーという「知識労働者」の仕事であろう。

こうした区別を設けるだけで、仕事の見通しはぐっとつきやすくなるだろう。

でもってこれは実はフリーランスにおいても言えることだと思う。たとえば倉下は、「一冊の本を書き上げる」という行為をテンプレート的に進めていくことは毛嫌いするが、かといって一日のタスクをどう割り振り、進めるかということまで非管理的になってしまったらすぐさま破綻する。

これまでこの二種類の異なる進め方をどう考えれば整合性を持たせられるかを考えていたが、上記のように捉えればずいぶんとスッキリする。書き手の私と、マネージャーの私は「異なるやり方」で仕事(執筆/マネジメント)に向かえば良いのだ。

というわけで、基本的には組織の仕事向けの話ではあるが、もっと広く「ナレッジワークをどうデザインすればいいのか」という大きな視点で問題提起が為されている本である。